2015年5月12日火曜日

レビュー「桶川ストーカー殺人事件―遺言―」

久しぶりに kindle で本を買った。買って 1 日、いや数時間で読み切った。時間を忘れて読み切ってしまう本に、久しぶりに出会った。

この本は、1999年10月に起きた「桶川ストーカー殺人事件」について、写真雑誌「FOCUS」の記者をしていた筆者が、記者としてではなくほとんど当事者となり事件に巻き込まれながら、犯人を追いかけ、「警察の不祥事」を暴いていくノンフィクション。

私は、昔から「犯罪史」的な読み物や Web サイトをよく読んでいた。特に殺人に関するもの。あまりいい趣味とは言えないかも知れない。犯人の狂気と被害者の状況を読み込むたびに、私は何かわからないものでいつも心が、動かされていた。罪は犯しているものの、心情的に同情の余地がある犯人、どうしようもない迷惑をかけていて、死んでいった同情できない被害者。あまりに狂っていて、全く同情ができない犯人。とても幸せで殺されることに納得できず、なんの非があるのかと涙を誘う被害者。そんな背景を本や、Web サイトを通じて読むのが好きだった。

本編は、桶川駅前で起きた当時21歳の猪野詩織さんが、ナイフで背中と胸を刺され亡くなった事件の背景を、本当に細かく記事のため当事者達に取材をしていたものをまとめたものだ。筆者は、その取材の中で彼女の友人であった取材相手の言葉に突き動かされ、その犯人のストーカー行為だけでなく狂気に満ちた言動に驚きながら、彼らを追いかける。そして、所轄の上尾署が、「仕事をしたくない」という理由で、捜査をしていなかった。そんな事実が判明していく。筆者は、捜査をしない上尾署の刑事達よりも先に犯人の居場所を突き止める。そして、警察が逮捕するよりも先に、殺人犯をカメラに収めることに成功する……。

この本は読みすすめるほどに、犯人達への怒りよりも「警察への怒り」の方が大きくなっていく。1999年から2000年にかけて、栃木リンチ殺人事件の栃木県警、新潟少女監禁事件の新潟県警、そして桶川ストーカー殺人の埼玉県警、その後の神奈川県警の多くの不祥事、マスコミを賑わせていた警察の怠惰が明るみになった頃に、その急先鋒だったFOCUS の記者であった筆者の手記。その筆者の思いの源流が、この事件、そしてこの手記に現れている。